☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(1)

ライフスキル「創造力」について
『うさこちゃんとじてんしゃ』 ディック・ブルーナ ぶん・え
松岡享子 やく 福音館書店
入学、就職の季節。子どもや若者の夢や希望、がんばりたいことなどを耳にします。
うさこちゃんは、大きくなったら自転車に乗りたいと思っています。自転車に乗ってお出かけしたい、大好きなふわこおばさんの家に行きたいのです。そして、うさこちゃんはその往復の道に思いをはせます。
おばさんの家に何度も行って、途中の野原、池、森などでも遊んだことがあり道の様子がよくわかっているのでしょう。お花をみたり、池のあひるにパンくずをやったりと楽しいことを考えます。しかし、自転車で森の中を通るのは難しいし、坂道はきついと考えます。でも、今よりは大きく強くなっているから大丈夫と未来の自分を信頼できるうさこちゃんの考え方には子どもの生きる強い力を感じます。
おばさんが焼いてくれるおいしいクッキーの香りもよみがえっています。大好きな大人、会いたい大人がいることは、本当に幸せなことだと思います。
帰り道は下り坂。自転車はスピードがでておもしろそうですが、転んでは楽しくないし、運転が難しい森の中はもちろん慎重に進みます。雨がふることもあるでしょうが、これもまた愉快と大らかなうさこちゃん。
家に帰れば、自転車の手入れ。楽しむことだけでない堅実さに感心してしまいます。
仕事場まで自転車で通っていたブルーナさんも、きっとピカピカに自転車の手入れをされていたことでしょう。
色々思いをめぐらせたところで、今の自分を否定するのではなく、小さすぎるという今の自分を受け入れ、はやく大きくなりたいと言ううさこちゃん。大きくなることが待ち遠しいと思うことができる、そして大きくなった自分への信頼感が育まれる育ちが子どもたちに必要だと思います。空想ではなく、確かな自分を知って豊かに想像を巡らせ、未来を展望する力は、生きていくために必要な「創造力」につながります。
日本では、閉塞感が続いています。国連からも日本の子どもの貧困化が心配される状況がある中で、コロナ禍が追い打ちをかけています。自分の命を絶った子どもの数も増えています。そして、多くの若者、子どもたちが未来を断念しました。
子どもたちのライフスキル「創造力」を育みながら、私たちも今持っている「創造力」を発揮して、この現実を変えていきましょう。
廣岡綾子・廣岡逸樹