☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(12)    

 2022年3月 『しっぱい!とおもったけど』トッド・パール作  解放出版社


                      (裏表紙)

  トッド・パールの作品は、明快な色使いと単純な形で表現され、内容にはユーモアが溢れています。また、この作品の訳が関西弁でされていることから「しっぱい」を前向きにとらえることができるようにしていると思います。

 この本の表紙を子どもたちに見せると、「変!」の声が返ってきます。大人なら「こんなことして・・・」と苦笑してしまう方もいるでしょう。なんといっても、失敗はたいていは、したことを否定したくなったり、恥ずかしくなったりすることが多いですから。

でも、表紙の子どもと犬は楽しそうで得意そうでもあります。もう表紙だけで色々なことが考えられます。そして、本を開いていくと、もう一度題字を書いた表紙と同じ図柄があります。よく見ると背景の色や靴下、服の柄は少し違います。「変!」と言っていた子ども達に「表紙と同じ?」と聞くと、再度見比べて違いに気づきました。

後のページでは、犬や他の動物たちが思い思いの色違いソックスを身につけています。そしてそれは「楽しいファッションのできあがり」。なるほどなぁです。長男が高校生位のころ、「腰パン」(わざとズボンを緩く下げ気味にはく)が流行ったのを思い出しました。このページを見るころには、子どもたちの反応に「変!」の意識はだいぶ薄れていたようでした。

他のページでは、一人だけ違うことをしていたり、思いがけずやうっかり、下手だったり、分からなかったり、やりすぎ、苦手、わざとで「しっぱい」の場面が出てきます。左ページで「しっぱい」しても、右ページで見方、考え方を変えれば「だいじょうぶ」「よかった」に変わります。柔軟な思考を味方にできれば、「失敗は成功の母」です。

 子どもは毎日成長しています。意識するしないにかかわらず、うまくいかないことだらけ。うまくいかないこと、失敗のない成長はないとも言えます。大人がそこに効果的に関わり、時に意識して見守ることが必要です。取り返しのつかない大きな失敗にならないように、子どもの小さな失敗に一緒に取り組みましょう。

 生きていればだれでも「しっぱい」があるでしょうが、その時には「助けて」が言える、またその声に反応してくれる社会でありたいと思います。その為のライフスキルです。

 10個のライフスキルの中では、主に「自己認識スキル」と「問題解決スキル」「創造的思考スキル」が表現されています。ここでいう「自己認識」は、事実を事実として正しく受け止めた上で、「どんなことがあっても、自分は大丈夫だ。きっと乗り越えていける。」という「肯定的自己認識」です。最近注目されている「レジリアンシー」(心の弾力性、しなやかさ)にも関連するスキルです。

 自分が嫌なこと不快なことをなかったことにして、見て見ぬふりをして、快楽だけを求め続ける、今だけ金だけ自分だけの無責任な為政者や公務員がこのところ増えていると感じています。私は、今を生きている子どもたち、そしてこれからの未来を生きる子どもたちが、そのような大人にならないで欲しいと強く思っています。「問題解決スキル」を子ども時代にしっかり養い、今までの人類が解決できなかった問題(気候変動、貧困の解消、平和な社会の実現など)の解決にチャレンジする大人になって欲しいと願います。

 私(逸樹)は40年あまり、子どもからの相談を受ける仕事をしてきました。この10年間は、主にスクールカウンセラーとして活動し、3月16日に最後の学校でのカウンセリング活動を終えたところです。

 その中でいつも心にとどめていたのは、「自分をだめだ」と捉える「ネガティブなぐるぐる思考」をやめよう。ほら、今・ここでは、二人で結構楽しく語り合えているだろう?」と「自分はどうせなにやってもだめだから、誰かを道連れに、外の世界を破壊してやるんだ(誰かを傷つける)という攻撃的行動に移すのではなく、その「妄想」は頭の中だけにとどめておくこと。その破壊的認知・思考を創造的思考(多くは、リフレーミング(*1)の手法を使いました。)に変えて、穏やかで平和な楽しい創造力を使うとこんなに世界が平和で穏やかに見えるだろう?」という2つのメッセージを伝えることであったように思います。そのメッセージが子どもたちの腑に落ちると、自らの力で一歩ずつ歩み始めます。「困難な問題も必ず解決できる。」ということを体験した子どもたちは、ネガティブなぐるぐる思考の渦に巻き込まれることは少なくなります。自分の力だけで無理なら、適切に他の人の助けを借りて立ち向かっていけるようになります。

 人類の歴史から見ても、「創造的思考」は、行き詰まった現状を打ち破って、新しい未来を創っていく大きな力となる「人間に特有」(ヒトとしての思い上がりかもしれません)とも言えるスキルだと思います。そのように大上段に構えなくても、発想を柔軟にしておくと、ちょっとした失敗にはめげないで、時には失敗を笑い飛ばして、健康に生き延び、成功(問題解決)に結びつけることができる「わくわく」を体験するスキルと言えます。

*(1)リフレーミング:物事を見る枠組み(フレーム)を変えて、違う視点で捉えなおすことで、ポジティブな理解が進むようになること。はじめに、家族療法のテクニックとして使われるようになりました。

*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。いずれも 心理・社会的変化に対する適応能力を高めるスキルです。

廣岡綾子・逸樹   


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