☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(13)

    2022年4月

   『 はんぶん ちょうだい 』 佐々木利明 ぶん・古川タク え   福音館 

 この本は、「月刊ちいさなかがくのとも」の2007年4月号です。テーマは一つのものを半分こするということです。この本を私たちが提供しているスキルトレーニングの「セカンドステップ」の中の「フェアなあそび方」のレッスンの補助教材として使っています。

私たちが生きていく上で「フェア」は重要な考え方です。日本語では公正、平等ということですが、このことが失われたり、バランスが悪いと安心、安全に生きて行くことができなくなります。

「セカンドステップ」では問題解決の要素にこのフェアという考え方を入れています。

つまり「あなたにもわたしにも良い方法」を考え、選ぶということです。

 ビジネスの世界でも「ウィン・ウィン」ということがずいぶん前から言われだしました。

古くは、江戸時代の近江商人が「三方よし」ということを大事にしていたとか。(売り手良し・買い手良し・世間良し)

このフェアという考えを子ども達と分かりやすく学ぶには、一つしかないおもちゃをどうしたら仲良く使えるかとかおやつを分けるといった場面が想定できます。

絵本の中ではおかあさんが留守の間、犬のトムくんと猫のヤムくんがおせんべい、飴,、ジュース、ケーキ、クレヨンを半分こにして分け合います。おせんべいはまあまあ半分に、飴はちょうど同じ数だけ、ジュースはコップの形が違うため、本当に半分か怪しい、ケーキは上下半分にしたので上の方はクリ-ムとイチゴがあるけど下半分はスポンジケーキだけ、クレヨンは本数で半分にしたので思うような色の画がかけない・・・半分に分けるといっていろんなことがおこります。おかあさんは「なかよくしていてね。」と言って出かけたので、半分こがうまくいってなさそうでもけんかになっていません。

 登場人物はトムくんとヤムくんだけではなく、この二人の背後でネズミが二匹で同じように半分こしています。ネズミのほうにも注目するとさら考えかたの可能性が増えます。

家庭の子どもの人数が減り、おやつを分け合う場面も減りました。テレビも家庭に一台から複数台、それも録画機能がついたり、またスマホもありでチャンネル争いも減っていると思われます。食べ物や家財の使いかたは、より個別的になり自分の中でどう欲求をコントロールするかに問題がシフトしたかのようです。

 しかし、食べ物をはじめとするすべての物を作る場面では、資源をどう分配するのかという根源的問題から逃れることはできません。背景にある政治も然りです。また倫理的な問題も「フェア」かどうかは大事なことです。

 私たちの周りで起きる様々なことを「フェア」という視点で見ると、問題の本質が理解しやすくなったり、解決の糸口が見つかったりしやすくなるように思えます。

 十数年「セカンドステップ」を実践させていたでいているこども園では、レッスンの中で、クッキーを実際に分けるということをしています。

 子どもたちの意見を聞きながら分けてみます。バニラ味とココア味が入った袋菓子を使いますが、味が二種類あるので子ども達も悩みます。また、欠席のお友達の分をどうするか?(欠席があっても子どもたちが気づかない時もあり、こちらからどうする?と聞くこともあります。)余った分をどうするか?考えることがたくさんあり、楽しいレッスンになっています。

この絵本の最後はお母さんが帰ってきて、お留守番はおしまい。ヤムくんとネズミさんがおかあさんの右腕に抱かれ、トムくんともう一匹のネズミさんが左腕に抱かれ、「はい、これで はんぶんこ!」というわけです。もちろんみんな笑顔です。

この絵本で現されているライフスキルで、第一に取り上げたいのは、問題解決スキルです。フェアに物を分けるとはどういうことか読んでいると自然と感じ取れるようになっている。物を正確に分配するということは、現実社会では簡単なことではありません。細かく見れば、アンフェアな分け方をしているし、そのことによるストレスを体験することも多いのがこの世界です。

 他に、意思決定スキル、感情対処スキル、ストレス対処スキルを身につけていく体験の例として、読むことができます。子どもたちはこの絵本を読んでもらったり、自分で読むことによって、トムくん、ヤムくんのやりとり、そしてねずみのやりとりをしっかりと感じ、理解していきます。対話しながらお互いにとってよい問題解決をしていくことの大切さが伝わってきます。ライフスキルの模擬トレーニングとなる一冊です。どこかの元首相も幼児期にこういうスキルトレーニングを受けていたら、今の日本は少し違っていたかもしれません。(*1)

 (*1):『嘘つきシンちゃんの脳みそ』  2021/1/1

                     齋藤 芳弘 (著), 矢吹 申彦 (イラスト)


*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。いずれも 心理・社会的変化に対する適応能力を高めるスキルです。

             廣岡綾子・逸樹   


閲覧数:3回0件のコメント

最新記事

すべて表示