☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(14)                   

                         2022年5月 

  『 いちご 』   平山和子さく   福音館書店 

『 いちごです 』 川端 誠 作   文化出版局


 

5月いちごの季節です。

 いちごは、色や形の可愛らしさとおいしさから、子どもも大人も好きな果物です。当然絵本の世界でもリアルな科学絵本から、幼児絵本にはよく登場しています。

『 いちご 』は、冬のいちごの様子に始まり、春に花が咲き、実がなり小さな女の子がいちごを食べようとするところまでをリアルに描いています。

本物のいちごを目の前にしたようで、甘い香りや食べた感覚がよみがえります。文章は簡潔で女の子の思いにいちごが答えながら進んでいきます。

 『 いちごです 』は川端 誠のくだものの5作品(他にりんご バナナ みかん すいか)のうちの一つです。こちらは、いちごの様々な姿を表しています。

 いちごアイス、いちごを使った様々なデザート、ジャム、いちごの形のカップ、畑のいちご、透明パックに入れられたいちご、、、 文章はほとんど「いちごです」で、そのことばにはページごとに違う色が使われています。いちごの様々な側面をデザイン的に表現しています。

 表紙には6個のいちごの絵。中表紙では女の子が右手の人さし指で1、左手は、ぱあで5を出していて、いちごという言葉遊び。1と5を足せば、表紙の6個のいちごにつながるという作者のお茶目も楽しい絵本です。

私が実践している「セカンドステップ」プログラム(*1)では、レッスンカードである写真教材を使います。写真の中の人物の表情、どんな場面なのか、どんな物があるかをよく見ることから始めます。人物の気持ちを考え、その場面の課題を話合ったり、課題のスキルを練習したりします。

この学習に限らず、学習の基本の一つは『よく見ること』です。実際私たちは、多くの場合圧倒的に視覚刺激に頼って生活しています。しかし、機械の発達によって、視覚刺激はテレビ、スマホなどから取り入れ、間接的体験になっています。情報量も多いため、実物を見なくても分かったつもり、実物を見たり体験する時間も無くしています。

 絵本も同様です。地元の子育て支援センターで読み聞かせにあわせて絵本講座をしていますが、保護者の方にお話することは、絵本と現実を結ぶ体験をすることです。いちごを食べるだけでなく、いちごがなっているところに出会わせること。葉っぱや花をみたり触ったり、実感することです。

絵本は、作者の目を通した物の理解と表現の追体験です。実体験とのバランスが必要であり、そこでの心動かされた実感が絵本の楽しみをより深くすると思います。こうした体験の積み重ねの上に、お話やファンタジーを楽しむ力が作られていくのではないでしょうか? 

取り上げた二冊の絵本はどちらもいちごを食べようとしている場面で終わっています。

『 いちご 』では、いちごの成長する過程を知り、心待ちにしたからこそ食べる前に「おいしそうな いちご、どうも ありがとう 」と思い、『 いちごです 』では、色々ないちごの食べ物を見た後比べてみると、牛乳と砂糖をかけて食べる食べ方を「こうやってたべるのが いちばんです」と思うのでしょう。食べるという分かりやすい実感の中に、様々な体験と思いが含まれていると感じました。

(関連する「ライフスキル」について)

『 いちご 』では、女の子と(擬人化された)いちごとの会話が展開されていきます。こんなふうに「効果的なコミュニケーションスキル」を学ぶことができるのも絵本ならではです。

 『 いちごです 』では、「自己認識」「共感性」「意思決定スキル」が表現されています。いろんなかたちで表現された「いちご」を見て味わいながら、最後に「(いちごは)こうやって食べるのがいちばん(好き)」と女の子が言います。いろんなかたちで表現された「いちご」を見てきたあとでは、どのいちごが一番好きかは人によってちがうし、時によってもちがうはずです。この絵本の終わりでは、「いちごに砂糖と牛乳をかけて食べるのが一番好きという「自己認識」、そしてこの方法で食べる行為に「意思決定スキル」を見ることができます。そして、この本を読む読者は、「そうだ、自分もその食べ方が好きだ。」と、この女の子の気持ちに、「共感する」人もいるでしょう。もちろん、「自分はこの女の子とはちがう。ショートケーキに乗ったいちごが一番好き」と考えてもOKです。その時は、自分と他人は違うということを意識したうえで、「あなたの気持ちもわかる」という、「共感性」を体験することになります。


(*1) 「セカンドステップ」プログラムとは

 米国ワシントン州にあるNPO法人Committee for Children (1979年設立)によって、「子どもが加害者にならないためのプログラム」として開発されました。「キレない子どもを育てよう」を合言葉に、子どもが幼児期に集団の中で社会的スキルを身につけ、さまざま場面で自分の感情を言葉で表現し、対人関係や問題を解決する能力と怒りや衝動をコントロールできるようレッスンが計画されています。

 2001年には、全米で『もっとも効果的なプログラム』として、米国教育省より最優秀賞を受けました。日本では300を超える学校や保育園、児童養護施設などで実施され、効果を上げています。

セカンドステップは、年齢別のコースがあり、教材のすべてが以下の3つの柱から構成されています。

1相互の理解:自分の気持ちを表現し、相手の気持ちに共感してお互いに理解し合い思いやりのある関係を作る。

2問題の解決:困難な状況に前向きに取り組み、問題を解決する力を養って、円滑な関係をつくる。

3怒りの扱い:怒りの感情を自覚し、自分でコントロールする力を養って、建設的に解決する関係をつくる。


(セカンドステップレッスンカード)











*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。いずれも 心理・社会的変化に対する適応能力を高めるスキルです。

廣岡綾子・逸樹


閲覧数:6回0件のコメント

最新記事

すべて表示