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☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(2)

    2021年 5月


   『おひゃくしょうのやん』 ディック


・ブルーナ ぶん・え 

                       松岡享子  やく 福音館書店





わが家の周辺の田んぼには水が張られ、じきに田植えが始まります。しらさぎたちが耕運機で掘り返されて出てきた虫を食べようと、耕運機の後をついて行く姿がみられます。

 今月もひき続きブルーナの作品を取り上げました。 

おひゃくしょうのやんは、畑に花の種をまきますが、小鳥に種を食べられ怒ります。すぐに案山子を作って立てたので、小鳥は来なくなり、何日かすると青い花が咲きました。 しかし、花が咲いただけではなく、~もっとよいことがおきました。~ というのです。

 それは、やんが鳥たちのために、庭に餌台を作り、余っていた種をまいてやったという事です。そして最後のページでは、「やれやれ」やんは、まんぞくしていいました。「これで あんしん。ゆっくり やすめるぞ。」~ 。 絵は、作業着を着たやんが目を閉じてベンチで憩う姿です。

 花は生活に潤いをもたらすものです。やんにとって花づくりは農作業の合間の楽しみでしょうから、種を食べられて怒るのは当然です。

花の種を食べられてから、餌台を作る


までの何日間か、やんは鳥たちのことを幾度となく考えたと思います。みなさんは、やんがどんなことを考えたと想像されますか?

 案山子でとりあえずの解決はついたものの、かわいそうなことをしたという気持ちもあったかもしれません。鳥がいることのメリットなど環境的なこと等も考えたのかもしれません。これは、物事を多角的に考えることにつながるものです。

そういえば、動物たちのために、なり物を全部取り尽くさないということを聞いたことがあります。聖書の中には、穀物やオリーブの一部を残して寄留者、孤児、寡婦のものにするようにとあります。いずれも弱い立場の保護や共生を言っているのです。

私たちが提供している、「セカンドステップ」という社会性をはぐくむ教育プログラムの中では、「(相手に対し思いやりのある)やさしいことばを言う」「フェア」というレッスンがあります。相手の気持ちや状況の理解や、自分も相手も良い方法を考える問題解決の仕方を学ぶものです。この本の中レッスンに関係する点があると思います。社会性を身につけることの目的は、「安心・安全」な社会で共に生きることです。最後のページのやんの安心した姿は、私たちが求める姿を現しているように感じました。



今回のライフスキルのキーワードは「問題解決スキル」。このスキルが自分にとっても、他者にとって効果的に発揮されるには、ほかの9個のスキルも総合的に使われていることがわかります。そしてひとつの問題解決は、より高次の問題の解決(他者との共生)へと展開していきます。「不寛容」を感じさせる事件報道が多くなっている今、ブルーナーの絵本に学ぶことは多いと思います。


*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、

意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。いずれも 心理・社会的変化に対する適応能力を高めるスキルです。


廣岡逸樹・綾子







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