☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会(11)
2022年2月
『ロボットとあおいことり』 デイヴィッド・ルーカス作 偕成社

心臓が壊れてゴミ捨て場に送られたロボットと、南の国に行く途中の青い小鳥のお話です。
ゴミ捨て場に山積みの機械たちは、すっかり錆びていて、ロボットが話しかけてもどこからも返事はありません。次第にロボットも錆びていきます。
捨てられて初めての冬、その錆びだした体も雪で白くなりだしたある日、青い小鳥がロボットの肩に止まりました。
南の国に行く途中の小鳥は、寒さと疲れの為にもう飛べないと言うので、ロボットは心臓があったところが空いているからと一晩泊めてやりました。朝になり小鳥が甘やかな歌を歌うと、ロボットの心もはずみ、歌に合わせて踊りだしました。
小鳥は「このままロボットの胸に住みたいけど凍えて死んでしまうだろう。しかし、南の国は自分の力で飛んで行くには遠い・・・」と悲しそうに言います。
ロボットは、小鳥を胸に入れて南の国へ。南の国に着いたロボットは「いつまでも、ぼくのむねにすんでいて・・・」と言いながら命尽きてしまいます。その後、小鳥たちは毎年ロボットの胸を巣にして雛をかえし、歌を歌っているというお話です。
メーテルリンクの「青い鳥」やオスカー・ワイルドの「幸福の王子」を思わせるお話です。
心臓が壊れ空っぽになった所に、小さくとも暖かく、生きている小鳥がいることは、ロボットに最後の生きていく力を与えました。ロボットがロボットとして生きていた時はどうだったのでしょうか?
さて、 渡り鳥である小鳥は、何かわけがあって南に移動する時期が遅くなったようですが、ここでは絶対的弱者の存在です。しかし、なんとか生きようとしています。自分の率直な気持ちをロボットに話すことで、自分だけではなく次の世代に生をつなぐことができました。そして、ロボットも最後の時間を小鳥のために生き、朽ちるばかりでなくモニュメントのようになって次の命を生む場所になりました。
コロナ禍の中で私たちが問われていることは、どのように人とつながりあって生きるのか、言葉を交わしあうことの意味、共感や利他的に生きることのように思います。そこには、このブログで窓口にしているスキルという言葉はそぐわないのかもしれませんが、やはり普段から考え、身に着けていればより良いのではないかと思えます。
地元小学校での「ブッククラブ」」としたボランティア活動をしています。本来のブッククラブの手法には及ばないのですが、一冊の絵本を自分の意思で参加した子どもたちとじっくり読み、絵を見て、対話するというスタイルで行っています。読むことの幅を広げる、絵を読み解くこと、内容の背景などに興味を広げる、感じたことを自由に話し交流することを意図しています。月一回、昼休み時間での実施、子どもからのリクエストで次回読む本を決めることもあります。

先日、この本を読み聞かせした後、気になる場面の絵を見ながら話合いました。題字のある見開きページの左側の時計の絵で、子ども達は色々考えてくれました。生きることと時間のつながりに思いがいたったようです。作者が、絵に表現した考えを想像し共感している姿をうれしく思いました。
これまでも、10個のライフスキルという視点で
10冊の絵本を紹介してきました。では、何のために、子どもたちはこのライフスキルを身に着ける必要があるのでしょうか?
私は、「他者に対する愛」を実現するためであると考えます。
心臓が壊れ、錆びついて動くことができなくなったロボットが小鳥に対する愛を感じ、その強い愛があるからこそ、ロボットは小鳥を自分の体の中に入れて、荒れ野を越えそびえたつ山を越えて、南の国にたどり着くことができたのでしょう。これはまさに「愛の奇跡」ですね。そして、最後のページには、南の国で永遠に動かなくなったロボットの中で、新たな愛が育まれ、さまざまな植物、鳥、動物、魚たちが豊かに愛し合っている様子が描かれています。
コロナ禍で、孤立や分断、対立が深まり、不安や恐怖が広がっている今だからこそ、じっくりと読んでほしい一冊です。私たちの中にある「地球愛」を心の中に鮮明に思い描くために。
*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。WHOが、1993年に大人になるまでに身に着けてほしいソーシャルスキルとして定めました。いずれも 心理・社会的変化に対する適応能力を高めるスキルです。
廣岡綾子・逸樹