☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会 (18)

更新日:6 日前

                         2022年 10月

 『ノンタン いたいのとんでけ~』 キヨノ サチコ 作・絵

                          偕成社


子どもだけでなく大人にも根強い人気のノンタン。正直、自分の子育ての間、それほどノンタンシリーズが好きではありませんでした。しかし、家にある三つの作品はボロボロですから、子どもの求めに応じて何度も読んだのだと思います。少し他人事のような言い方ですが、要はあまり記憶に残っていない作品だったということです。

ノンタンの魅力が分かったのは、社会性を育むプログラム「セカンドステップ」で、副教材として絵本を使い始めてからからです。「待つこと」や「友達に優しいことを言う、助ける」といった内容を学ぶ時にノンタンの作品の読み聞かせをしています。

元気なノンタンの絵は子どもたちに人気だと思いますが、子どもの実情がシンプルに取り上げられていることが、子ども達の共感を呼んでいるのではないかと思います。子どもの実情の多くは失敗やしてはいけない事をしたり、うまくいかないことに出くわす事ですが、それを通じてノンタンが成長している姿があることが大人からは支持されているのではないでしょうか。

さて「いたいの、いたいのとんでいけ~」は、多くの人がけがをした時に親や先生、友達などからしてもらった、あるいは、大人になって子どもにしてあげた経験をお持ちではないでしょうか。ちょっとしたことなら、これで痛さが減ったような気がしたり、気持ちが持ち直したりするから不思議ですが、誰かに関わってもらうことの効果なのでしょう。

ノンタンが自分のお気に入りの赤い自動車に乗って遊んでいると、妹のタータンも乗ろうとしてきます。ノンタンは、「のっちゃだめ!」と思わずタータンを突き飛ばしてしまいます。

 ひざを打って泣くタータンに「いたいのいたいのとんでけ~」でタータンは泣き止みますが、飛んでいった「タータンのいたいの」は山へ。


 怒った山は「タータンを食べてやる」とタータンをつかみます。ノンタンだけでなく一緒に遊んでいた動物達も助けようとします。ノンタンは山にも「いたいのいたいのとんでけ~」をするとこんどは海に、、、、山の時と同じことが繰り返され、最後はいたいのいたいのいたいのかいじゅうがタータンのいたいのをおいしく食べてくれてハッピーエンドです。ノンタンはタータンに謝り、車にも乗せてあげています。

タータンが転んだ原因はノンタンにありますが、いたいのいたいの~をしたり、山や海の怒りから守ろうとする行動は優しい行動です。一緒に遊んでいた動物たちも心配してずっとそばにいてくれています。

 誰もが子どもに優しい人に育ってほしいと願うと思いますが、「セカンドステップ」では優しいということは行動を伴うことであるとして、設定された場面でどんなことができるかを考える練習をします。

 優しい行動の第一歩は、相手の表情や状況から相手の理解をし、話を聞いてあげることです。

 ノンタンの本は今回の作品に限らず、表情が分かりやすく描かれていて表情の読み取り、気持ちの理解をするのにも適しています。

今回のライフスキルは、「共感性」「感情対処スキル」「創造的思考」「問題解決スキル」が主に表現されています。

 まず、最初のページで、外で楽しくいっしょに遊んでいるみんなの表情に「喜、楽」という感情の「共感性」が現されています。子どもたちは、肯定的感情を友だちと共に楽しく遊ぶことによって培っていきます。

 しかし、多人数で遊ぶ体験では、自分のおもちゃを勝手に使われたら「いやだ、腹が立つ」というネガティブな感情の体験もつきものです。

 ノンタンは、妹タ-タンが、自分の許可なく赤い車に乗ろうとしたことで、妹に対する攻撃的感情が生まれ衝動的に妹を突き飛ばしてしまいます。

 妹の膝から赤い血が出て、泣いている姿を見て、妹に対する申し訳ないという気持ちと妹の痛みを取り除こうという考えが生まれ、「いたいのいたいのとんでけ~」(感情対処スキルのひとつ)を試みます。きっと、大人の人からそう言われて、「痛み」が少し消えた体験があるのでしょう。「外在化」という「問題解決スキル」をうまく使っています。

 しかし、タータンの痛みは飛んでいったようですが、ところが「山」「海」のところに飛ばしたのでは、「痛み」そのものはすぐには消えません。「山」「海」も痛いのは嫌ですから、怒って、ノンタンたちを攻撃しようとします。最後に、ノンタンは「おそらの、・・・、いたいのかいじゅうにとんでいけ」と「いたいの」をおいしく食べるかいじゅうを思いつき(創造し)、その「いたいのかいじゅう」に「タータンのいたいの」を食べさせたのです。

 このノンタンの創造力は結果オーライなのですが、追い詰められたときに出てくる「火事場のくそ力」的思いつきだったようです。

 だから、「タータンのいたいの」がおそらのかいじゅうのところに飛んでいったあと、「いたいのかいじゅう」がいつか仕返しに来るのではないかと、心配しながら待つみんなの表情も丁寧に描かれています。

 「いたいの」が消えるに十分な時間が経っても、かいじゅうが来ないことが分かって、みんなでほっとして、元のようにみんなで楽しく遊び始めます。もちろん、今度はノンタンもタータンと一緒に、笑顔で赤い車に乗っています。


*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス対処スキル 以上10の技術のことです。WHOが1993年に「おとなになるまでに、身に着けてほしいスキル」として提唱しました。

廣岡綾子・逸樹  

                              

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