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☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会 (31)                             

                             2023年11月

『イソップどうわ』 渡辺弥生監修 千葉幹夫著  ナツメ社

イソップ童話と言えば「うさぎとかめ」「アリとキリギリス」「北風と太陽」等がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

イソップ童話はそもそも大人向けの寓話、たとえ話だったそうです。動物や虫などになぞらえた話が多いことから子どもにもなじみやすく、童話として広く知られるようになったということです。

 たとえ話はあるテーマについての考えを簡潔に提示するためであり、イソップの話も各話はその話の意図とする要旨が述べられています。

 1971年出版の白水社「イソップ寓話」二宮フサ訳の「イソップ寓話」には、414編の話が収められています。今回取り上げる絵本には100編の話が収められており、自分の知っているイソップはごくごく一部だったと思いましたが、その4倍もの話があると知りさらに驚きました。

作者イソップ(原名アイソポス)は紀元前6世紀の人物とされ、本当のことはよくわかっていないそうです。もともとは奴隷の身分であったところ、頭の良さから哲学者や王様にまで用いられ、自由の身になって旅をし様々な人に話をして聞かせたとか。伝わった話を別の人がまとめたものがイソップ寓話や童話となり、日本には16世紀にキリスト教の宣教師から伝わり「伊曾保物語」という本にまとめられたとされています。

「アリとキリギリス」は元々は「アリと蝉」で、伝えられていくうちに変わっていったようです。イソップ自身は話を書き残していないとのことですから、著者にこだわらず、お話を楽しめばよいかなと思います。たくさんの話が残され、親しまれてきたた背景には、より良く生きていこうとと考えたり、意見を交わしあってきた人々の姿が想像されます。

さて、この本は発達心理学の視点で100編の話を5章に分けて構成しています。各章のテーマは①大切なことに気づく力を育てる ②思いやりや助け合う心を育てる ➂未来を見通す力を育てる ④問題を解決する力を育てる ⑤幸せになるための考え方を育てるとしています。

童話をこのように分類してしまうと勉強のように感じてしまわれるかもしれませんが、最近では絵本が単にお話を楽しむというより、読み聞かせから生まれることに注目されているのも事実です。そしてコミュニケーションのツールとしての絵本という捉え方がなされてきています。

「イソップ童話」がたとえ話であることは、読む人に物の見方、考え方を提示しているわけですが、その意味で物語の絵本よりも話し合いの入口が分かりやすく存在すると思います。

 そこでもう一冊の本の登場です。「10歳からの考える力が育つ20の物語」石原健次作矢部太郎絵 発行株式会社アスコム の中には5編のイソップ童話がとりあげられています。

この本は童話探偵ブルースと秘書のシナモンの会話を通して、それぞれの童話を様々な角度から考えていくというスタイルです。そうすると「これからの世の中を生きる力が身につく!」と説明されています。先の「イソップ童話」で示されたたとえをこの本のなかで、ブルースとシナモンが話し合ったり深堀している様子を読んで、自分もその中に入って一緒に色々考えてみている感じになります。

 こうしたことを、実際に学校や家庭でしてみると面白いし、友達、家族の中に新たな発見が生まれるのではないかと思います。一つの話を真ん中にして、正解(こうあるべき)を求めるのではなく思っていることを語りあってみる。このようなことは子どもだけでなく、大人にも必要ではないかと常々思います。

一人で本を読む楽しさはもちろんですが、人と意見交換をすることから生まれる面白さが読書を豊かにするように思いますし、先述の発達心理学的にみた①から⑤の力の醸成もより効果的になされるのではないかと感じます。

監修者の渡辺弥生さんは、WHOの10個のスキルを5つに分類しなおしています。

 おおざっぱには、以下のように対応していると言えます。

①大切なことに気づく力を育てるは:自己認識(特に自己肯定的側面)、

②思いやりや助け合う心を育てる:共感性(特に他者への信頼)、効果的コミュニケ   ーションスキル、対人関係スキル

➂未来を見通す力を育てる:創造的思考、批判的思考

④問題を解決する力を育てる:意志決定スキル、問題解決スキル

⑤幸せになるための考え方を育てる:創造的思考、批判的思考

 イソップ童話は、10個のライフスキルのトレーニングにとてもよい教材であると言えます。今回読み通してみて、イソップ童話を素材に子どもたちと読みあい(村中李衣さん(*1)の言葉)をしてみたくなりました。妻が日置小学校で月1回実践している「ブッククラブ」はささやかな実践ですね。


(*1)村中李衣:山口県生まれ。ノートルダム清心女子大学教授。『「子どもの本」の創作講座 おはなしの家を建てよう』他多数出版


*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、

意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス

対処スキル 以上10の技術のことです。WHOが1993年に「おとなになるまでに、身に着けてほしいスキル」として提唱しました。

             廣岡綾子・逸樹   

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