top of page

☆彡 子どもの幸せ・絵本・社会 (33)

2024年 1月

『へえー すごいんだね』

きたやまようこ  偕成社


 青色、黄色、緑色、赤色のなんとも可愛らしい子おにが4人。はらっぱでなかよく遊んでいるとなぜみんな違う色なのか疑問がわきました。

みどりおにのみどりちゃんは「~みどりのはっぱからとびだして きたのよ。」と言いいます。きいろおにのきよちゃんは「~きいろい おつきさまから とびおりて きたのよ。」ととくいがお。あおおにのあおくんは「~あおい うみから とびだして きたんだもの。」おおいばり。そして、 自分がどこからきたのかを話すたびに、聞いていた3人は「へえー すごいんだね。」と驚いてくれます。

 ところが、あかおにのあかたろうは自分がなぜ赤色なのかを知りませんでした。それで、ついつい「、、、あかい、きんぎょ、、、。」と言ってしまいました。3人からからかわれたり、噓つきと言われたあかたろうは、悲しそうな顔をして帰りました。帰る道々赤いものを見るたびに、ここから自分の赤い色はきたのかなと思いますが、帰ってお母さんに聞いてみることにしました。すると真っ赤な夕陽が見えました。そして、「あのおひさまからなら すごいのになあ」と思いながら、帰りました。お母さんは「まっかな ほのおのなかから うまれて きたのよ。あの ゆうひと おんなじ まっかな ほのおよ。」と教えてくれました。自分が願ったとうりだったあかたろうは、どんなにうれしかったでしょう。自分の中にあってほしいもの、あこがれることができる物事があることは幸せなことです。 

自分がどこからきたのかが分かったあかたろうは、3人に知らせに行きました。3人はあかたろうの話を聞いて、勿論「へえー すごいんだね。」と言ってくれました。

 その後、4人は僕たちはみんなすごい、いつまでも仲良し、色はちがうけどちっとも不思議じゃないと言って、遊びます。

幼児むけ絵本といいつつも、自分を理解すること、相手を理解すること、些細なことで相手を見下げてしまうことなど考えさせられる本です。自分がどこから来たのかがわからなかったあかたろうには、自分探しのように、赤いものばかりが目についていました。

あかたろうには、家があり頼ることができるお母さんがいました。お母さんから自分のルーツを聞いて自信をとりもどすことができました。そして自分の話を聞いて、あかたろうもすごいと認めて受け入れてくれる友達もいました。ラストの場面は夕陽に手を振る4人の後ろ姿です。この後、それぞれ家に帰りごはんを食べよく寝て、また明日も仲良く遊ぶであろう子どもの幸せが感じられます。

この絵本を見ながら、自分の親がどんな人か知らない子どもたちとの出会いの中で起きた事が思い出されました。その子どもたちとの毎日は驚くようなことの連続、困惑の毎日でした。しかし、その子たちには辛さ、寂しさ、足もとが定まらないような心もとなさ、自分を形作ることのできないもどかしさ、、、そうしたことがない混ぜになっていたのだと思います。また、そうした気持ちを言葉で表現することができない苦しさがあったのだと今更ながら思います。

この絵本は、ライフスキルの中の「自己認識力」が中心に描かれています。「自己認識力」とは自分自身の性格や能力、思考方法、感情などを明確に理解する力のことです。

 「肯定的な自己認識力(≒自信≒私はOKである)」は、身近な他者(親、兄弟、親族、教師、クラスメイトなど)から「自分のルーツ(ライフヒストリー*)」も含め、「今のままのあなたでいいのよ(≒あなたはOKである)」というメッセージをほどよく受け続けることによって育っていきます。他者から否定される(あなたは、notOKだ。)ことが多すぎたり、気まぐれで感情を混乱させつづけるようなメッセージを受け続けると、「肯定的な自己認識力」は育ちません。自分とは違う他者(この絵本では、色の違う「おにのこ」と表現されています。)を理解(共感)し、仲良く平和に暮らしていく(私はOK、あなたもOK)には欠かせないスキルが「肯定的な自己認識力」と言えます。

 「私はnotOKで、あなたはOK」だと自己肯定感は低くなります。究極には自分を破壊する言動をとることが多くなります。また、逆に「私はOK、あなたはnotOK」という状態にあると、自分とは違う他者を攻撃し、破壊しようとする言動をとりやすくなります。

 大人も子どももみんな、「へえー、すごいんだね!」と他者(違った色のおにのこ)を尊重しながら、仲良く暮らせる世界にしていきたいですね。

*ライフヒストリー;:英語で「LIFE HISTORY」と表記し、「個人史」や「自分史」と訳されます。 人間の一生を記録や記憶から資料として浮かび上がらせる作業、もしくは資料そのものを指す言葉で、文化人類学などの分野で用いられる学術用語でした。社会的養護の中の子どもたちがより健康に育っていくためには、その子を育てる大人とともに、この作業をすることが重要であるとされています。

*ライフスキル:自己認識、共感性、効果的コミュニケーションスキル、対人関係スキル、

意志決定スキル、問題解決スキル、創造的思考、批判的思考、感情対処スキル、ストレス

対処スキル 以上10の技術のことです。WHOが1993年に「おとなになるまでに、身に着けてほしいスキル」として提唱しました。

廣岡綾子・逸樹   


閲覧数:8回0件のコメント
bottom of page